おおつるもとむ(大津留求)

みんなちがって、みんないい。

議会発言

2016年9月の議会発言

市が適齢者情報を自衛隊へ提出している件について

【まず問題整理】
自衛隊法及び同法施行令による自治体への適齢者情報提供の「依頼」について
防衛省人材育成課の担当者は、「名簿提供は自治体の義務ではなく、あくまで防衛省が協力を依頼する事項だと整理している」とマスコミの取材に答えている。(2016年3月22日付 朝日新聞)


あくまでも「依頼」なので、その対応は依頼された側、自治体側の判断。
大切な個人情報の取扱いだけに、自治体により判断が分かれている現状。

■依頼に「応じない」か、
■住民基本台帳を庁舎内で見せて書き写してもらう「情報の閲覧」か、
■希望する情報を自治体が「紙に印刷」又は、「電子媒体・データ」で渡すか。


全国的な対応状況
(防衛省調べ・福島みずほ事務所提供)

2014年度、全国約1700市町村の内、提供依頼に「応じた市町村」の状況。
■住民基本台帳の「閲覧」で対応したのが957市町村
■住民基本台帳の「情報を提供」したのが634市町村

また「情報を提供」した634市町村の「提供方法」は、
■623市町村が、紙に印刷して提供。
■11自治体が、「データで提供」、又は「データと紙で提供」。


2010年度まで、市は自衛隊へ住民基本台帳の「閲覧」で、4情報(氏名・住所・性別・生年月日)を提供してきたが、2011年度に「データで提供」へ変更し、現在に至る。


【質問】
①2011年度以降、市が自衛隊に情報を提供した人数。
②2011年度以降、データ提供へ変更の決定過程と理由。

【答弁から判明したこと】
①本人・保護者に承諾もとらず、
    2011年度から今年9月までに約2万3千名の個人情報をデータ提供。
 また卒業前年度(中2・高2・大3)時点で情報提供している。

《内訳》
2011年度 3,746名(大700、高2,050、中996)
2012年度 4,033名(大919、高2058、中1,056)
2013年度 4,996名(大1,902、高2,033、中1,041)
2014年度 5,012名(大2,008、高1,971、中1,033)
2015年度 4,192名(大2,119、高2,073)
2016年度  999名(中999、高・大は今後提供予定)


②「データ提供」に変えた理由は、
      自衛隊側の要望をうけ、関連部署で検討し「可能」と判断。

《メリット》
■閲覧の時は自衛隊側の転記誤りによるDM送付間違いが無くなった。
■閲覧だと自衛隊が来庁し、執務室内の一定場所を数日間にわたって
  書き写すスペースを占用され、他の閲覧希望者の利用機会の妨げになる。
■職員の付き添いが必要であり負担が無くなった。
・・以上の理由から「データで提供」が「最も合理的」と判断。

自衛隊の要望を最優先し、市民情報の適正管理など個人情報保護の観点がまったく無く、「最も合理的」と言い切った答弁。

これら答弁を受けて現状を具体的に聞いていく。

「住民基本台帳の閲覧」には、個人情報保護の「誓約書」にサインが必要
違反したら罰則も。しかし情報を渡すことは、住民基本台帳法で想定されていないので、
「誓約書」は存在しない。

《質問》
①提供した情報の管理は、どう担保しているのか。
②自衛隊が募集事務を終えたデータ破棄の確認方法は。

【答弁から判明したこと】
①書面で「関係法令を遵守し適正な情報管理に努める」等を示し提供条件にしている。
   一方で国家公務員や防衛省においても関係法令が整備されている。
②利用完了後、CD-Rを市に返却。

・・以上のことから、データ破棄も含め適切に管理されていると認識。


適齢者情報提供依頼書の利用目的には「自衛官及び自衛官候補生に関する募集事務に利用する」と記入されている。佐賀県では自衛隊が高3生徒の自宅訪問した事例も。

《質問》
「募集事務」の具体的内容は何か。

【答弁から判明したこと】
自衛隊や陸上自衛隊高等工科学校の募集案内パンフ類の送付に利用。他の目的では利用されていないと認識。


次は「中学生」に焦点をあてて質問。

■中学生は自衛隊法の適用外なので「住民基本台帳の閲覧」で個人情報を取得。
■学校教育の充実のため、文科省及び厚労省等は、
 「新規中学生卒業者を対象とする文書募集は行わないこと」という文章を出している。

■2003年の防衛事務次官通達「中学生に対する募集広告については、当該中学生の保護者又は当該中学生が
  就学する中学校の進路指導担当者を通じて行う場合に限る」

《質問》
自衛隊が提出した住民基本台帳閲覧請求書の請求事由と取得したい範囲は、何と記入されているか。

【答弁から判明したこと】
請求事由欄には「高等工科学校の生徒募集のため、対象者の保護者へ案内送付するため」。範囲は「平成13年4月2日から平成14年4月1日までの男子」、すなわち来年度末に中学校卒業予定の男子。

来年度末に卒業する男子の「保護者」へ案内を送付するのに、「本人」情報を取得している、ってなんかヘンなので、続けて聞いてみる。

《質問》
①「請求事由」と「取得したい範囲」の明白な不一致は、閲覧方法として問題無いのか。
②この情報をどのように使用するのか。

【答弁から判明したこと】
①目的を達成するため必要となる情報なので問題無いと判断。
②この情報をもとに「○○君保護者様」宛でDMを送付。


《質問》
自衛隊の閲覧方法は、通常の閲覧方法と同じか。

【答弁から判明したこと】
閲覧方法
◆一般・・・全住民リストの中から「自分で」必要な情報を抽出して書き写す。
◆自衛隊・・市が事前に必要情報を抽出・リスト化されたものを書き写す。


《質問》
市は、文科省及び厚労省等の文章や、防衛事務次官通達の趣旨に照らし、整合性をどのように考えているか。

【答弁から判明したこと】
DM送付は、中学校卒業予定者本人ではなく保護者宛なので整合が取れている。


学校教育の充実のため、中学生に文章は送らないで、となっているのに、自衛隊が転記しやすいよう「特別に」必要部分だけ抽出リストを作成し、「○○君保護者様」という裏ワザを使ったDM送付を積極的に支えている伊丹市。


再度、整理してみる。
■自衛隊の適齢者4情報提供「依頼」に対し、伊丹市は2011年度から自衛隊側の要望と、独自の法解釈及び業務上の理由で「データで提供」するのが「最も合理的」と判断し、本人・保護者の同意も得ず、中・高・大世代の約2万3千名分の情報を率先して渡している。

■伊丹市同様の対応は、2014年度防衛省調査によると全国約1700市町村のうち、11市町村のみ。

■中学生は自衛隊法の適用外が徹底され、今年度から一般的な「住民基本台帳の閲覧」対応になったが、「自衛隊のみ」転記しやすいよう事前に請求データを抽出・リスト化するなど「特別な配慮」をし、「○○君の保護者様」宛のDM発送に協力している。

最後に質問で明らかになった市の対応に対し、意見表明を行った。

* * *

子どもが学校からもらってくる連絡網。 
初めて見た時、驚きました。
クラス全体のものではなく、自分の名前のある列の部分だけ切り取られている。「最後はクラスで回収」と一文も。そんな時代です。

今回の場合、対象になった市民は、
知らぬ間に、個人情報が防衛省へ渡っている。
それを市が「率先して」協力しているように私には見えます。

決算特別委員会で、
「防衛省の依頼に基づく名簿の提供は法定受託事務では無いのでは」の質問に、「地方自治体が判断できる任意の規定であることは承知しておりますけれども」と前置きですが、部長は「認識」を答弁されています。

なぜ市は適齢者情報の提供「依頼」に対し、最大限の配慮をするのか。
そのヒントは、決算特別委員会での市長答弁にあるのかもしれません。
「どこまで便宜をはかるのか」との問いに対する答弁の中で、藤原市長は次のように述べています。


今は幸いにも伊丹に駐屯しております中部方面総監、あるいは第3師団長、あるいは指令とも非常に良好な関係を築けておりまして「いざというときは遠慮なく言って下さい」とまで言って頂いております。

そういう中で、これまでやってきた協力を後退させるとなりますと、誤ったメッセージ。ですから、自衛隊に対しても今後協力しない、あるいは手を引くといったような誤ったメッセージを伝えかねないというふうに思っておりまして。


ただ、これが伊丹市の、
行政のトップとして正しい姿なのか。
それとこれとは別問題ではないのか。

これを機会に「名簿提供は自治体の義務ではなく、協力を依頼する事項」という防衛省見解を再確認し、市の対応を再考していただきたい。

「本人に承諾を得る」作業をするなり、
出来ないなら「依頼に応じない」なり。

いきなり無理なら、せめて他の自治体にならい「閲覧」にすべきです。
そのことを心から要望して、私の質問を終わります。